堤防から鮫を釣って食べてみた(伊豆大島)

堤防から鮫を釣って食べてみた(伊豆大島)
3月から9月(最盛期は春)にかけて産卵期を迎えるネコザメは、比較的浅瀬に集まる。
そのネコザメやナヌカザメをメインターゲットに、芝浦ふ頭から1時間40分ほどの伊豆大島へ向け高速船に揺られた。到着後、レンタカーに乗り込み4つの港の状況を調査することにした。
伊豆大島のサメ達とその他のターゲット
ネコザメ(Heterodontus japonicus)
ネコザメは別名『さざえわり』とも呼ばれ、貝・ウニ及び甲殻類などを好んで食べるとされる。水深40mまでの比較的浅瀬に生息し、全長120㎝程まで成長する。
ナヌカザメ (Cephaloscyllium umbratile)
水深200mまでの岩礁帯に生息。全長は140㎝程まで成長する。その名前を七日鮫とも書き、本種は胃に水や空気を吸い込んで膨らませることができる。その為、陸に上がっても7日間は生きていると言われるほど生命力の強いサメである。
フトツノザメ(Squalus mitsukurii)
500m付近まで生息する深海ザメの一種。背びれに棘を持つので扱いに注意して頂きたい。過去に深海ザメ釣りを行った際、一つの餌に3匹のフトツノザメが掛かって深海から上がってきたことがある。非常に獰猛で群れで泳いでいるケースもあるようだ。
ドチザメ(Triakis scyllium)
最大全長は150cmほどで日本全域に比較的多くみられる鮫。
ホシザメ(Mustelus manazo Bleeker)
北海道以南の日本全域に生息。背にみられる無数の小さな斑点が、星に似ていることからこの名前が付いたようだ。私の地元福岡県宗像市では、干物にして食用としている。
ウツボ(Gymnothorax kidako)
堤防釣りの外道中の外道。一晩で1本の竿で20匹近く釣れることもある。骨の処理など捌くのが大変だが、食用とすれば身に非常に旨味があり、最高の食材となる。
トラウツボ(Muraena pardalis)
体表のトラ柄が毒々しいイメージだが、ウツボと同じく食用として頂くことが可能。ウツボに比べると若干個体数は少なめ。
コケウツボ(Enchelycore lichenosa)
ウツボに酷似しているが湾曲した口と体表の模様で見分けることができる。
エイ
写真はイズヒメエイ。写真以外のエイも伊豆大島で釣ることができる。
ポイント
伊豆大島にはサメ釣りに適した港が4つある。
・元町港
1番の出帆港として使用される元町港は、大きく沖に伸びる堤防で、足下から沖までブロック型のケーソンが入っており全体的に浅い。
・岡田港
海が荒れたときの出帆港として使われることが多く、足下はブロック型のケーソンから沖が砂地、水深が深く大型のネコザメやナヌカザメなども上がってくる。
・泉津港
日本で唯一堤防からクロマグロが釣れるといわれている。
小さな漁港だが、沖に投げると水深が40㍍近くあり、深海系の魚や大型のサメも狙える。
・波浮港
大きな湾になっていて、大島丸が入るため深く掘られているので水深がある。湾内は居つきのエイやネコザメ、ドチザメが多い。一つ湾の外側には、沖に飛び出している堤防があり、全体的に岩礁でウツボやネコザメ、エイも釣れる。過去には先端でクエも釣れている。
実釣編
この日は強風の影響でうねりがあり、風裏で一番状況の良い泉津港を選択した。堤防先端に入り足元にイカ一杯を針に掛け足元に投入した。仕掛けはPE12号、中通しの重り30号、スイベル、ハリスはナイロン2広80号、サークルフック28号。
釣れ続けるウツボにうんざりさせられたが、潮止まりから引き潮となり本命のアタリが連発した。同行者も含めネコザメ3匹が一気にあがった。
この日あがったネコザメの最大サイズは115㎝の老齢個体であった。60㎝径の磯網で何とか引き上げることができるサイズである。
泉津港の特徴である足元から一気に深くかけ下がる形状を利用し、10mほど投げることにより棚を一気に下げ、ナヌカザメや深海ザメの一種であるフトツノザメまで釣り上げる事ができた。
ナヌカザメは雄雌双方120㎝程の個体を釣り上げた。
陸にあげると口から大量の海水を吐き出し丸くなり硬直する。その吐き出す海水の量に驚かされた。
エサを投げ込み、ただ待つだけの非常にシンプルで簡単。待っている間は夜を通して満天の星空を眺たり、同行者との会話を楽しむ。
シンプルではあるが、サメやウツボ、エイ等異形の姿の魚達に出逢うことができる、非常に魅力的な釣りである。ただし、サメやウツボは強靭な歯を持ち、また、エイは毒針を尾に持ち合わせており、取込みの際などには十分気を付けていただき楽しんでいただきたい。
実食編
ネコザメとナヌカザメ双方食べてみたかったのだが、今回はナヌカザメの雄を頂くことにした。岡田港の側の民宿吉陽さんにご協力頂き、早朝にも関わらず厨房をお借りした。
なかなか捌く機会のない軟骨魚類のサメであったが、容易く解体を終える。皮を剥ぐと美しい身が現れた。又、鰭の部位はフカヒレを作るために持ち帰ることにした。
今回は新鮮ということで刺身。そして鉄板のから揚げを調理し、ありがたく頂くことにした。
鰭は現在も自宅で乾燥中である。近日ふか鰭スープで頂く予定である。
皮は剥ぎやすく軟骨魚類だけに骨もない。
ナヌカザメのお刺身。非常に綺麗な身に期待が高まる。
から揚げもカラッと揚がった。実食に向けて期待が高まる。
先ずは刺身。
非常に水っぽく臭みは全くない。同時に味もない。なんというか奇妙なシャキシャキ感であった。なんとも不思議なお刺身。つまり微妙な一品となった。
次に頬張ったのは唐揚げ…
さくっと衣を噛むと中から口中に広がるジューシーな脂と思いきや、なんとこれは水分。これはあかん!あかん!一品。完食はしたが、とても残念な味わいであった。
ナヌカザメは難しい食材であることが明らかとなる。
友人の稻田氏。彼の表情が上記2品の微妙さを物語る。
後日、今回の結果を『サメ料理研究家』の田中一嘉氏に相談したところ、彼の調理したナヌカザメは寒ボラのような食感で非常に美味しかったと言うこと。ほぼ同時期に釣れたもので、我々が食べたのと同様に雄であった。彼が調理した写真を観て納得。巧みに手の込んだ料理の数々であった。
次回は伊豆大島に荷物いっぱいの調味料類を担いでいく、もしくは『サメ料理研究家』を連れて行く必要がありそうだ。