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奇蟲・サソリモドキの味

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2016.05.15
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奇蟲・サソリモドキの味

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2016.05.15
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平坂 寛

「五感を通じて生物を知る」をモットーに各地で珍生物を捕獲しているライター。
生物の面白さを人々に伝え、深く学ぶきっかけとなる文章を書くことを目指す。

著書:「外来魚のレシピ〜捕って、さばいて、食ってみた〜」「深海魚のレシピ〜釣って、拾って、食ってみた〜」(ともに地人書館)
「喰ったらヤバいいきもの」(主婦と生活社)

八重山や奄美の島々に、とある奇怪な虫が生息している。
その名はサソリモドキ。サソリを擬くという名だが、サソリを遥かに凌ぐアバンギャルドな見た目と生態から、誰が言い出したものか「世界三大奇蟲」の一つにも数えられている。
果たして、
彼らにとって名誉かどうかもわからぬ称号である。

そしてこの度、僕はこの世にも奇天烈な虫を食べてみようと思いたったのだ。
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珍虫奇獣、美鳥怪魚の宝庫である奄美・八重山地方。ここには国内でもトップクラスの異形を誇る虫「サソリモドキ」が生息している。

なぜ、そんな変な虫をわざわざ食べるのか。
別に美味しいという前評判を聞いたわけではない。ある特性が舌の好奇心をかき立てたのだ。
この虫はお酢のようなニオイの毒ガス(毒霧)を噴霧して外敵から身を守る。この生態から「ビネガロン」という異名をも持っているのである。
ということは、だ。そのまま食べてもお酢の効いた味がするんじゃないの?ナチュラルボーンビネガーテイストなんじゃないの?そんな身も蓋も無い発想が、僕を南の島へと連れ出した。

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サソリモドキの探し方は簡単。山道に転がっている石をひたすら持ち上げるだけ。

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ほら、いた。こちらはアマミサソリモドキ。奄美大島にて。

日本には二種のサソリモドキが生息している。
石垣島、西表島など八重山諸島に分布するのがタイワンサソリモドキ、奄美大島に分布しているのがアマミサソリモドキである。
なお、アマミサソリモドキは伊豆諸島の一部にも移入され、野生化している。

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こちらは石垣島産のタイワンサソリモドキ。両種はとてもよく似ており、一見しただけでは判別が難しい。

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長い脚とハサミを振りかざし、腹部を仰け反らせてこちらを威嚇するタイワンサソリモドキ。

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手で触れても、噛みついたりハサミで攻撃したりはしてこない。が…

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しれっとビネガーフレーバーの毒ガスを噴射してくる。これが頭にくるほど強烈。だが、量さえセーブしてくれればそのニオイはお酢そっくり。

なお、タイワンサソリモドキとアマミサソリモドキとで、このニオイに大きな差異は無いように感じられる。
ちなみに、捕獲のしやすさで言えばアマミサソリモドキに軍配が上がる。個体密度が尋常でないのだ。
タイワンサソリモドキはアクセスの良い石垣島ではさほど多くなく、ポイントを知らないとファーストコンタクトまではちょっと苦労する。
西表島はそれに比べると格段に個体数が多いが、それでも奄美大島にはかなわない。市街地近くで夜中にゾロゾロ歩きまわるサソリモドキたちを初めて目にした時は心が躍ったものだ。国民の99%にとっては、本当にどうでもいい情報だが。

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なお、採集および観察を行う際には奄美ではハブやヒャン、

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八重山ではサキシマハブといった毒蛇に注意。

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八重山の山地で石起こしをしていると、「モドキ」でない本物のサソリに出くわすことがある。だが、これはヤエヤマサソリという、ほぼ無毒と言っても差し支えの無いほどの無害な小型種である。

粘膜や皮膚に毒霧が付着すると炎症を起こす場合があるため、捕獲に際しては注意を要する。
特に、眼が曝露されると危険なので、サソリモドキへ顔面を近づけすぎないように気をつけるべきである。

調理時には前もって、しっかりと「放屁」をさせておいた。余分な「酢屁の素」が残留していると、何かしらの悪影響があるかもしれないと考えたからだ。
なお、ガスの噴霧は一発で打ち止めではない。大型個体では五回分程度のストックを持っていると考えてよい。噴霧が完全に見られなくなる(ニオイをまったく出さなくなる)まで、物理的な刺激を繰り返し与える。
「ガス抜き」が済んだら、体表に付着さた汚れを水で洗い流してやる。これで下ごしらえの完了である。
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サソリモドキの天ぷら。彩りにレモンを添えてみたが、酸味を自ら足してくれるであろう彼らには不要だったか?

調理法には天ぷらをチョイス。理由は、なんとなく形がエビっぽくて、酸味がマッチしそうだから。
キツネ色に揚がったサソリモドキを箸でつまみ、塩をほんの少しまぶして口元へ運ぶ。
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いただきます!

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あれ…。思っていたより悪くないかも…!

前胸部を前歯でかじる。カリッ、と乾いた音が響く。カリカリ、ジャクジャクとした食感に続いて、覚えのある香ばしさが鼻腔へ抜ける。これはアレだ。エビのヒゲと尾の中間の味と食感。…意外と悪くないな。いや、美味いかマズいかで言えば、正直に言って美味いサイドに分類される食味である。

あれー?サソリモドキって割とイケるんだ…。
いやいや!まだ判断するのは尚早だ。今食べたのは、あくまで「安全地帯」である前胸部。お酢の製造工場があるのは腹部なのだ。尻の先まで食べねば、本来の目的は果たせない。

ちょっとおっかないが、箸に掴んだままの腹部を頬張る。食感はやはりクリスピーだが、前胸よりも軽く、食べやすい。
そして、お酢の香りは…しない。
おや、おかしい。こんなはずでは。

二匹、三匹と食べ進むが、特に異様な風味や酸味は感じない。毒性を恐れるあまりにガス抜きをしすぎたか?
予想外のおいしさとクセの無さに狼狽しつつ噛みしめた四匹目。ようやく、わずかな酸味を舌が捉えた。続けざま、捕獲時に散々嗅いだあのニオイが口腔を通じて鼻に抜けた。

「すっぱい!」

ほんのわずかに食酢をまぶしたような風味が、確かに感じられた。
この個体にはガスの素が少量ながら残っていたようだ。

…酸味が加わっても、別段に不快な味ではない。だが、あらためて「この酸っぱさの成分は、彼らが外敵を追い払うために生成してる毒なんだよな…。」と考えてしまうと、食欲を削ぐことこの上ない。

この日は酸味を感じる個体を二匹食べたが、その後特に体調の異変などは生じなかった。
だからといって、この酸味の素が本来有害な成分であることに変わりはない。
もし万が一、八重山や奄美で遭難して、緊急食糧としてサソリモドキを食べなければならない状況が来たら、前胸部以前までを食べるか、ガスを徹底的に出させてから調理するよう心掛けたい。
そんな状況に陥らない限りは、決して真似しないでください。

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