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幸運を呼び寄せた魚、レイクトラウト (栃木県・中禅寺湖)

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2016.11.04
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幸運を呼び寄せた魚、レイクトラウト (栃木県・中禅寺湖)

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2016.11.04
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本沢晴明

釣り好きの家族に囲まれて育ち、幼少から釣りと魚獲りを嗜む。無駄に釣り歴は長いが釣りの腕前は一向に上がらない。「永遠の初心者」をモットーにルアー、フライ、エサ釣りと節操なく様々な釣りにチャレンジする。『都市型釣りブログ』を展開中。

「日本ではそこにしかいない魚」

なんとも刺激的に聞こえたセリフだった。
その魚の名はレイクトラウト(Salvelinus namaycush)。
本来は北米北部に分布するイワナの一種で、僕にとって、とても特別な存在となっている魚だ。

そしてこのレイクトラウトが暮らす「そこ」とは紅葉で有名な日光は中禅寺湖である。image

実は中禅寺湖というのは鱒釣りの聖地としても名高いのだ。ただし、誰でも簡単に釣れるわけではなく、かなりストイックな釣りを求められることでも知られている。

レイクトラウトのことは当時通っていた釣具屋の店員さんに教えられた。
長身でハンターのような雰囲気を醸し出す彼は、その厳しい風貌とは裏腹に、少年のように目を輝かせてレイクトラウト釣りの魅力を私に語ってくれた。

ブラウントラウトやレイボートラウトと違って日本で中禅寺湖だけに導入されている魚であること。一匹を釣るまでの険しさ、そして釣り上げた際の感動。
まるで夢物語でも聞いているような気分だった。いい歳をしたおっさんが、胸をときめかせながら聞き入っていた。image日帰りでも秘境が味わえる水辺。それが中禅寺湖。

釣り方の話にしても初めて耳にするワードばかりで、普段は関東の都市河川や釣り堀で竿を振っている私にはいささか敷居が高く感じられた。

その後も再びハンター風の店員さんに話を聞くために足繁くお店には通っていたのだが、やがて釣具店は閉店してしまい、彼に会う機会も失われてしまったのだった。

もうあの夢物語は聞けないのだ。私はとても寂しく思った。
だがこれをきっかけに「今度は私自身が中禅寺湖に行かなければならない!この手でレイクトラウトを釣り上げろ!」と勝手に妙な使命感を持つようになっていった。
思い込みとは怖いものだ。

神の声でも聞いたかのように心が燃え上がる。
魚に対してこんなにも執着を持つことは久しぶりのことだった。imageレイクトラウト用にちゃんと道具も揃えた。真剣だった。

禁漁期間中にコツコツと道具を揃えた。
そして何度も何度も「中禅寺湖 レイクトラウト 釣り」という文字列を検索ウインドウに打ち込み、ひたすら人様のブログを見返す日々が続いた。

そして中禅寺湖は四月の解禁日を迎えた。image

ついにレイクトラウトに挑戦する日がやってきたのである。

前夜から目をギラギラさせながら道具を車に積み込み、まるで外国にでも旅立つ気分で日光へと車を走らせた。

東北道をひた走る。道中のサービスエリアでは期待を抑えていられず、タバコを持つ手が微かに震えた。

深夜のイロハ坂では鹿の群れに遭遇した。鹿との衝突を恐れながらも、それでもワクワクは止まられなかった。

自分が置かれている状況が非日常的に感じられ、釣りを始める前から気持ちは高揚しっぱなしだった。まるで、とても大きな冒険をしているようだった。

まだ暗いうちに湖畔へ着いた。
遊漁券を購入した店で「朝一が勝負だからね」と告げられ、慌てながら準備を開始する。

image遊漁券は必須。

だが初めての釣り場で、初めての魚。しかも辺りは暗闇。どこで釣りを始めるべきか見当がつかない。
人影は見あたらないし、背後の男体山を眺めていると身震いをおこしてしまった。image日中ならば美しい景色なのだが、暗いうちはなかなかおっかない…。

足場が悪い湖畔を慣れない足取りで歩き出し、直感で「ここ釣れそう」と思えた場所で足を止めた。

力一杯ルアーを投げ、神経を研ぎ澄ましながら水中を泳ぐルアーの動きをイメージする。

image使用したルアー。

ルアーが湖底に到達するまでの秒数をカウントする。1、2、3、4、5…、10…、20…、50…。今までに通った釣り場では経験したことのない、とんでもない水深だった。

ネットの知識だけをもとに黙々とルアーを操作しているが、果たしてこのやり方で間違いはないのだろうか?
自信を失いかけながらも一投一投を大事にルアーを操作し続けた。

釣りを始めて一時間ほど経っただろうか。
うっすらと夜が明け始め、釣竿のガイドが寒さのあまり凍り始めた。

冷たい水につま先が痛くなってきた。
そろそろ休憩をしようかと思っていた矢先、不意にゴツっと手応えが竿から伝わってきた。
ルアーが湖底へ沈んでいく最中のことである。

「魚のアタリだ!」
思わずビクッ!と身体が反応したが、なんとなくアワセを入れるべきタイミングだとは思えなかった。

「よしよし、大丈夫…、大丈夫。このやり方で間違いはなかったんだ」
自分に言い聞かせるように独り言を呟く。

やがてルアーが着底し、アクションを加えようとしたその時、さらに大きな衝撃が手のひらへ伝わった。

ズンっ!と竿先が湖面に向かって持っていかれた。

「オワッ!」
思いがけず呻声が漏れる。釣り人の習性とも言える、驚くと竿を煽ってしまう動作が、上手く魚を掛けていた。

ドスンッという重く、鈍い手応え。
竿は弧に曲がり、チリチリとリールから糸が引き出されている。

最初は根掛かりかと疑うほどだったが、針に掛かっているソレは左右に不気味に動いている。
間違いなく生き物だ。

ニジマスのような俊敏な動きは全く見られず、派手なジャンプやエラ洗いなどもしない。

グググ…!ヌォ〜…とひたすら力強く、重い。
時折、グネグネと動く感触が手に伝わるたびに不気味さが増していく。

これは本当に魚の動きか?まさか水鳥でも掛けてしまったのか?とすら思い始める。
糸の先につながった得体の知れない相手に恐怖を感じていた。

後ずさりと前進を繰り返し、慎重に獲物を寄せ続ける。
手と膝がガクガクと震え出し、ロボットの様な動きでリールを巻き続ける自分を情けなく思ったことを覚えている。

放出されていた糸が、ほぼすべてリールに収まった。
もう姿が見えてもいい頃合いだ。獲物はすぐ近くに来ている。

夜が明けきらぬ暗い空の下、湖面に刺さった糸の先へ目を凝らす。

と、グネンっ!と白い腹部が翻った。
ついに姿を捉えた!やはりそこにいた!魚だ!
背中の模様が保護色となって湖底に溶け込み、視認できていなかったのだ。

落ち着いて背の模様を確認する。ああ、レイクトラウトに間違いない!

湖底の苔に足をとられながら伸縮性のランディングネットをブンブンと振り回す。何度かミスをしながらも、ようやく頭からネットに収めることができた。

「よっしゃあああ〜!」image

image

喜びが腹の底から湧き上がる。
ネットに収まりきれない魚の大きさに驚き、嬉し涙が滲み出す。image
爬虫類を連想させるような美しい模様と。そしてその雄々しい面構えに圧倒される。image
半ベソになりながら、まじまじと魚を見つめ、夢中でその姿を写真に収めた。image

image

しかしグズグズしてはいられない。
深みにレイクトラウトを運び、必死にエラに向かって水を掻いて蘇生させた。

そうするうち、彼は力を取り戻しはじめた。
やがて尾を掴む手に、自力で泳ぎ出そうとする力を感じた。けれど一瞬、「手放したくない」という想いが頭をよぎった。
掴んだ手を圧す筋肉のうねりが「もう放してくれよ」と言っているようだった。

最後は頭を軽く撫で、両手で送り出すようにリリースをした。
大きな尾鰭をユラリ、ユラリと動かし、見る見るうちにレイクトラウトは深場へと消えていった。

魚が見えなくなってからは達成感のせいか、しばらくその場に立ち尽くし、キラキラと光る湖面を眺め続けた。

「ついてる…。」

思わず呟いた。

今日という日が、こんなに早く終わるとは予想だにしていなかった。

いつもの私ならもっと釣ってやろうと意気込むところだろう。だが、この日はこの一匹に満足してしまい、それ以上は竿を振ることができなかった。

残された時間で中禅寺湖のあちこちを探索してみた。すると、釣行前に何度も読み返していたブログのオーナーに出会うというこれまた幸運な出来事にも遭遇した。

本当に素晴らしい一日だったと感謝の気持ちを込め、二荒山神社と中禅寺湖に頭を下げた。
さぁ帰ろうかと車に乗り込もうとしたその時、妻からのメールが入った。

…そこには私が待ちに待っていた、めでたい知らせが届いていた。

まったくなんて一日だ。

幸運が幸運を呼ぶとはこのことだろう。

帰りの車中では今日の出来事を思い返し、またしても半ベソになってしまい、安全な運転が再開できるまで何度もサービスエリアで自分の感情を抑え続けた。

その後も「次なる一匹」を求めて中禅寺湖に通い続けたが、「あの一匹」を越えるレイクトラウトには出会えてはいない。

いつの日かモンスターと呼ばれるに相応しいレイクトラウトを手にしたい。

私にとってレイクトラウトは、幸運をもたらす魚となってしまったのだ。
この釣りに出会えたきっかけを作ってくれたあの店員さんには心から感謝をしている。

さらに後から知ったことだが、レイクトラウトは山上湖の天使と揶揄されることがあるそうだ。
あの雄々しい姿に天使とは。
いささか疑問を覚えてしまうが、少なくとも私にとっては、あの魚は紛れもなく幸運をもたらす天使だったのだ。

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